ポルトガルの環境問題への取り組み-プラスチック編-

最近、日本でも話題になっているプラスチックによる海洋汚染問題。よく耳にするので、「ふ~ん、そんな問題があるのね」ですましてしまいそうですが、、、。
先月、オーストリアのウィーン医科大学の胃腸病学者によって発表された事実は、「もはや、そうすませてはいけない!」と思わせるニュースでした。
そのニュースはというと、国籍の異なる8人の便をサンプリング分析した結果、8人全員の便からマイクロプラスチックが検出されたということでした。魚、鳥等から検出された話は過去に聞いたことがあったのですが、調べてみたら魚だけではなく塩、水道水等からも既に検出されていたそうです。
(Business insider: https://www.businessinsider.jp/post-177973)
(The Guardian:https://www.theguardian.com/environment/2017/sep/06/plastic-fibres-found-tap-water-around-world-study-reveals),
(NationalGeographic:https://www.nationalgeographic.com/environment/2018/10/microplastics-found-90-percent-table-salt-sea-salt/)
このように、私たちが普段口にしているものから既に検出はされていたので、人体から検出されたという今回のニュースは、驚くことではないのかもしれません。
現段階では、マイクロプラスチックの人体への影響については、確認段階だそうですが、自然界にないものを取り入れて、悪影響はあっても、体に良い影響をもたらす。。とは考えにくいですよね?となると、できることから少しずつでも、日々の生活でプラスチックを減らしていくようにすることが、大事なのかな、と思います。
結局は、地球に対して行ったことは、よいことも悪いこともいずれ自分たち(人間たち)に返ってくるということですね。
*マイクロプラスチックとは、プラスチック粒子のことです。洗顔料、ボディーソープに入っている角質等の汚れを落とすためのビーズが排水溝を通り抜けて海にでたり、また、レジ袋、ペットボトル等のプラスチックゴミが海に流され細かく砕かれてもできてしまいます。


国連環境計画の報告書によると、1人あたりの使い捨てプラスチックゴミの排出量は、アメリカに次いで日本は世界第2位です。それなのに、6月に開催されたG7首脳会議で「海洋プラスチック憲章」に日本が署名しなかったのは、とても残念です。
*海洋プラスチック憲章:プラスチックの削減、再利用に関しての目標を数値化したもの。
日本では、例えばレジ袋の有料義務化はまだ行われてはいませんが、(来年のG20首脳会議までに戦略を策定中とのこと)、比較的スーパー等が自主的に有料ルールを運用している印象があります。私がよく使うスーパーは、有料ではないですが、レジ袋の使用を断ると、エコポイントとしてお会計から、数円引いてくれます。レジの横に「袋はいりません」という意思表示ができるカードが置いてあるのもうれしいです!
また、日本では個人でもマイバッグを持参して買い物をされている方も結構目にします。
国民としての環境への意識は低いほうではないと思うので、国民の意識が無駄にならぬように、またプラスチックごみ排出国としての責任をもって、国は真剣に問題に取り組んでほしいと、切に願います。
さて、日本と同じく海に囲まれている国、ポルトガルではどうなのでしょうか。
国としては、2014年に一部のレジ袋(0.05ミリの厚さが対象)
について有料化を進めました。その結果、顕著な変化が表れたそうです。
なんと、大型チェーン店等では、有料化対象のレジ袋の消費が90%以上減ったそうです。
一方で有料化対象ではないレジ袋への消費に走らないかという疑問は、正直否めませんが。
(dinheiro vivo:https://www.dinheirovivo.pt/economia/quantos-sacos-comprou-no-ultimo-ano-so-publicar-segunda/)
ただ、レジ袋撤廃への段階的な動きと考えれば、一部のレジ袋から有料化を進めていくというのは悪い案ではないかもしれません。少なくとも、有料化にすれば国民はレジ袋を求めないということが証明されたというだけでも、良い実験だったのではないかと思います。
また、最近のニュースでいえば、大型スーパー「Continente」は11月5日以降に使用するレジ袋から、100%リサイクルできる素材に変更すると発表しています。
(Continente:http://news.cision.com/pt/continente/r/continente-disponibiliza-sacos-de-plastico-fabricados-com-80--de-material-reciclado,c636765142750000000)
レジ袋だけではなく、ポルトガルでは、ペットボトルの削減についても、ポジティブな動きが今年に入って見られました。今年の6月に、議会でPAN(人、動物、自然のための党)が提唱したデポジット制度の案が賛成多数をもって承認されました。


*デポジット制度:飲料等の容器を返却すると、返金されるシステム。返却されると、その容器は洗浄等のプロセスを経て再利用され、また使い捨て容器に関してはリサイクルされます。限りある資源を新たに使うのではなく、既に使用した資源を循環させて利用するので、環境に対して非常にポジティブな活動とされています。
PAN(人、動物、自然のための党)の案によりますと、初めは段階的に進めるそうで、2019年12月31日までに、ペットボトルのデポジット制度を試験的に取り入れ、2022年1月までにはペットボトルだけではなく、ビン、アルミといったその他の素材の容器のデポジット制度を義務化していくとのことです。
ドイツや、デンマークでは既にこの制度をとりいれ、進めているそうですが、ポルトガルでもデポジット制度が導入され、国全体に上手く浸透すれば、環境先進国の1つの国として注目されるかもしれません。ポルトガルは、再生可能エネルギーの分野でいえば、先進国といえますので、観光地としてだけでなく、環境先進国としてもっと、認められてほしいなと個人的には思っています。
また、最後にポルトガルでムーブメントになっている素敵な運動について少し、ご紹介したいと思います。
その名も「Menos Plástico, Mais Ambiente」。直訳すると、「プラスチックは少なく、グリーン(環境)はもっと」
実は、今年に始まったばかりの運動でして、インスタグラムやHPを見るとおしゃれな感覚で若者が中心となって運動を担っているような印象を受けます。
リスボンや、コインブラ、ポルトといった都市で使い捨てプラスチックに対する意識を高めようと、一般人だけではなく、レストランやホテル関係者も巻き込んだ啓蒙活動を行っています。いわゆる普通の「環境運動」ではなく、野外フェス等でも活動を行っているらしいので、いろいろな人を巻き込んで、楽しみながら考えようというのが、モットーなのでしょう。
(Menos Plástico, Mais ambiente:http://menosplasticomaisambiente.pt/#)


出典:Menos Plástico, Mais ambiente
個人的には、これはとてもな大事な考えだと思います。
もちろん、通常の環境運動も必要なことではあると思いますが、結局は多くの人の心に響かないと大きなインパクトを望めません。
なので、このように「楽しみながら環境に良いことを考え、行う」というのは、みんなが続けていくためにも、とても素敵な取り組みだと思います。
ちなみに、2018年の9月から10月に行われた調査(ポルトガル北部から南部までの8都市)では、ホテル・観光業での資源の再利用率が高い数値を記録しており(梱包等のリサイクル率は93%)、プラスチック素材ではない、いわゆる紙袋の導入を半数近い企業(49.7%)が行っているということが明らかになりました。
(Ambiente magazine:https://www.ambientemagazine.com/restauracao-e-hotelaria-conscientes-da-necessidade-de-encontrar-alternativas-ao-plastico/)
このMenos Plástico, Mais ambienteキャンペーンを含め、ポルトガルの環境問題に対する取り組みが今後どう進んでいくのか。
これからが、楽しみです。